イギリスの"vape は紙タバコに比べて95%安全"というのは本当か?

私はvapeは100%安全とは言えないが無害だという主張である。 いくつかの害(アレルギーがあるとか、喉が乾くとか、肺が病気の人は悪化するとか)があるが、死ぬようなものではないため合わなかったら使用を中止すれば良い。

にもかかわらず私が無害だという主張をしているのは、一般生活では避けられないリスクがどうしてもあって、それよりも安全なら無害であると判断している。
例えば、仕事上のストレス、長期間の労働などは仕事を辞めれば避けることが可能だが、生活があるので辞める事が出来ない。 車などは自分が使わなくても必要な人はどうしても居るし彼らにリスク回避のため車を手放せと言っても意味はない。 必要だからリスクを受け入れて使っているからだ。
"ゼロリスク”というのは素晴らしいかもしれないが意味がない。 何より、元々人体は発がん性物質代謝の過程で出てくためゼロリスクにはならない。 他の死因があるため、それで死者は減らない。

そこで今回の話だ。イギリスではvapeは紙タバコよりも95%安全という主張をしている。link 私が調べた限りvapeは紙タバコの5%も危険であるとは思えなかった。 そこで、イギリスの95%安全の根拠になっている論文を読み5%の危険の内訳を探ろうと思った訳だ。

Estimating the Harms of Nicotine-Containing Products Using the MCDA Approach DOI: 10.1159/000360220

これがその論文で著者はDavid Nuttで、私が信頼している疫学者の一人で、公衆衛生の第一人者。 この人と同レベルの学者は世界で3人居るか居ないかといったところ。

それで数値を見ると、紙タバコの4%程度の害しかないと書いていた。96%安全なのか、ちょくちょく数字が違うな。 vapeの害の40%程度は依存性に起因していた。残る2/3は、vape特有の死亡率とvape特有の罹患率、事故だった。 (図が小さくてわかりにくかったのでピクセルを数えた。) ニコチンが入ってるから依存はしょうがない。

一般の人は不思議に思うかもしれないがvapeの依存的要素は紙タバコよりもかなり低い。同じニコチンであるにも関わらずである。他にも、ニコチンパッチは依存性がほとんどない。 なぜ、中毒性の高いニコチンを使用しているにも関わらずこれらに違いがあるのだろうか?同じニコチンなら依存性は同じでなければおかしいのでは?
残念ながらそうではない。 紙タバコにはニコチンの依存性を高める最大限の工夫がなされている。使い切りで途中で中断や再開ができない。 また、紙タバコは吸った瞬間にニコチン濃度を高め、体の要求量を行き過ぎてニコチンを供給するためニコチンの耐性を高めてしまう。 これらの要素はニコチンをどのように供給するかでかなりの違いがでる。 ニコチンを緩やかに供給し、”ヤニ切れー>瞬間的な供給過多ー>ニコチン耐性”といったサイクルを断ち切る事が可能だ。 また、同じ味でニコチンの量のみ違うといったタバコが供給されていないため、味を変えずにニコチンの量を徐々に少なくするといったことが出来ない。他にも我々が知らない技術を使用してタバコ会社は売上を伸ばしてきたのだろう。

また、vapeの危険性を依存症抜きをざっぱに行うと2%になる。ニコチンが入ってなければこのような安全性になるだろう。 これは大体自分の直感とあっていて、日本のタバコでの死亡者数は12~13万人、自動車の死亡者数は3500人でvapeの想定死者数2400人を上回ってしまう。 すぐさま2%になる根拠はないし死者数が98%になる根拠もないが、ざっぱに見積もるとこうなる。 vape関連事故を減らしたり死亡率や罹患率を減らす努力は別途必要である。

また、このような意見もあって(2016年) https://www.rcplondon.ac.uk/news/promote-e-cigarettes-widely-substitute-smoking-says-new-rcp-report

長期的なvapeの健康リスクを見積もることは不可能ですが、利用可能なデータは煙を出すタバコ製品の5%の害を超えることはありそうもありません。また、この図よりも恐らくかなり低いでしょう。

なるほど、かなり多めに見積もって5%の害しかない、実質的にはかなり低い事が予想されていると。 これは私も納得できるかな。