vapeは喫煙へのゲートウェイ(入口)になるか?

結論:なりませんしなっていません

アメリカなどではvapeは喫煙につながるから有害、などと言われる事がある。主にアメリカでのみ言われています。 日本でもこのような論文が発表されていますし、調べようと思いました。

私はvapeがゲートウェイになるという理論はおかしいと考えていました。理由は主に2つあります。 ゲートウェイ効果に関してはlinkを参照してください。

また、より深く知りたい人は以下の資料を参考にしてください。 https://myheart.net/articles/marked-decline-in-youth-smoking-rates-contrary-to-what-the-headlines-say/ https://www.mdpi.com/1660-4601/12/5/5439/htm https://digital.nhs.uk/data-and-information/publications/statistical/statistics-on-smoking/statistics-on-smoking-england-2019 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6652100/

  1. ゲートウェイ効果は科学的根拠がなくても使える政治的に使いやすい用語である。
  2. 喫煙率が低下している現実。

まず、1に関して。ゲートウェイ効果は根拠がなくても科学的な用語に聞こえるし、大衆にとっても理解しやすい。 「なるほどvapeから喫煙に移行するのか。vapeを防げばええんやな」といった感じである。ただ現実はそのようにうまく説明できるかと問われればできない。 問題点がいくつかある。

  1. 酒量は増えかもしれないがコカインには行かない 酒を飲むなら「ビールの次はコカインだ。」といった事が起こればゲートウェイ効果に納得ができるのですが、無理あるでしょう。
    ありえるシチュエーションは「ビールの次は日本酒、ウィスキー、ウォッカ」などや「ビール、発泡酒ストロングゼロ」などといったアルコールの量やコスパを上げていく感じでありコカインに行きはしないでしょう。
  2. ゲートウェイ効果があるなら喫煙率が増えるはずである だが実際には猛烈に減っている。具体的に言えば、アメリカの高校生の喫煙率は年間0.355%の割合で減少していたが、2010年のvapeの登場とともに年間1.068%の減少になった。 vapeは喫煙率の減少を3倍程度に高める効果があるようだ。

この話を取り上げたのはいくつか理由があります。
このような主張をする記事から怪しい臭いがぷんぷんとしていましたし、いくらなんでもそれは無理筋という感じがしました。 ビールからコカインという遷移がないと考える人でも、vapeから紙タバコという遷移はありえると思うようです。

1つ目の理由は、このゲートウェイ効果はアメリカでのみ問題となっていますが、EUでは問題となっていません。 どちらもvapeと紙タバコが市場に存在しているため科学的な根拠があり、普遍的な現象であればUSでもUKでも観測されるはずです。

2つ目の理由は、私が考えていたゲートウェイ効果は徐々にアルコールの摂取量が増えていくといったものです。 また、どちらかと言えば味を変化させたくないでしょう。ビールが好きな人が速く酔うためといってウィスキーやウォッカに行くでしょうか? 発泡酒ストロングゼロに行くのではないでしょうか?
それと同じで、ニコチンをより強くしたいならvapeでニコチン濃度を強くすることが可能であるためニコチンを強くする目的では紙タバコに移行する必要がないのです。 また、vapeをやっている人曰く、「私のお気に入りは数多の味の中からは厳正な選抜を抜けてきている。タバコはどれもタバコ味でしょ?お気に入りには追加しないかな。」との事で味のベクトルが違い過ぎて比較対象ではないようです。

3つ目の理由は、医師が統計解析を行う場合に専門的な教育を受けていないため、相関関係と因果関係を混同している例を数多く見ます。これは日本だけの話ではなく世界中のどこでもそうです。
医師は仕事柄そうなのですが、個々の症例やレアな症例などを数多く知っている必要がある一方で、統計解析や科学的考察などが必要とされません。 疫学者などはかなり統計に熟達していますし、薬学者はどのような薬理作用なのだろうか?その仮説は無理筋。などといった科学的考察が必要不可欠なのですが医師には必要ありません。 知らなくてても医師としては十分ですし、そのような能力は必要とされていません。患者も期待していません。
そのため、彼らの書いた論文やその査読は混沌としている事が多いし、私の中では地雷扱いです。

上で紹介した論文もそうなのですが、喫煙率が増えていないがゲートウェイがあるという主張だけで論文の査読が通ります。 これは著者だけではなく学者コミュニティ全体が機能していない証拠でもあります。
間違った論文を出版するのは、1. 読むための時間を消費させ、他の研究者の研究時間を削る。2. 政策決定など広範囲の影響を与え、国民に健康被害を発生させてしまう可能性がある。3. 誤った情報の修正は大変。多数の人は最初に見た情報の印象を強く記憶してしまう傾向があり、後で修正するのがとんでもなく大変。などの理由でかなり問題となる行為です。

大量の記事や論文を読むのは一般の人では大変ですし、専門家はあてにできないしといった状況の中で、私が取捨選択をした結果自体は他の人の事実確認の助けになれば良いと思い記録を残しておきます。